うるとらすーぱーえくすぷれす

技術を尽くして全力で遊ぶ

バランス概論(1)歩数と経験値~古のRPGゲーム制作論第6回~

ゲームバランスの肝は歩数である

主人公が街を飛び出して冒険の旅に出ます。
その旅の間に多くの戦闘を行ってレベルアップしていきます。
そして最終的にはラスボスを倒すまでに至ります。

一般的に主人公の強さを決めるのは獲得した経験値の総量です。
序盤は経験値の総量が少ないため弱く、後半になるほど総量が多くなるため強くなります。

ところで経験値を得るためには敵を倒さなければなりません。
そのためには敵との遭遇が必要です。
敵と遭遇するためにはゲームのマップを練り歩かなければなりません。
つまり歩数が積み重なるほど主人公は強くなっていると言えます。

一般的に主人公が得た経験値は、増えはすれど減ることはありません。
歩数と経験値は比例するのです。
また、経験値は敵によって変化することがありますが、歩数は一歩ずつしか増えません。
これはゲームバランスの調整において歩数が重要な要素であることを意味しています。

プレーヤーはさ迷う運命

ある時点でのプレイヤーの歩数を推測するためには、人がゲームのマップでどのような動きをするのかを知らなくてはなりません。
この点に関しては第2回で述べたように、国産のコンピュータRPGが登場して10年も経たない時代から様々な観察が行われてきました。
第2回の復習となりますが、ゲーム上のマップにおいて「人は見えている道の最奥に進みたがる」という習性を持っています。

第2回では街のマップでしたが、ダンジョンやフィールドにおいてもその習性は変わりません。
それどころか、ダンジョンやフィールドでは珍しい宝箱やまだ見ぬスポットという報酬があるのでさらに習性が強化されます。
次の図をご覧ください。

一本道
一本道
図の番号1がスタート地点で番号2が目的地です。
一本道なので、プレイヤーは道なりに進みます。
スタートから目的地までの歩数は1と2の間の距離を出せばいいだけです。
とても簡単です。
では、次の場合はどうでしょうか?
十字路01
十字路

この図も先ほどと同じように番号1がスタートで番号2が目的地です。
この十字路に直面した時、プレイヤーはどのように動くでしょうか?
おそらく予想が付くと思います。
ゲーム上のマップにおいて「人は見えている道の最奥に進みたがる」という習性を持っているのがヒントです。
この十字路では道が複数見えています。
もうほとんど答えを言っているようなものですね。
そう、答えは『全ての道を最後まで辿る』が正解です。
「なんだ、そんなことか」と拍子抜けするかもしれません。
ですが実際に図に表すと侮れないことがわかります。
十字路での進路
十字路での進路

プレイヤーが番号1から番号2まで迷わずに目的に辿り着いた場合、プレイヤーは引き返して十字路を曲がって番号3か4の奥へ進みます。
奥に辿り着いた後はまだ未確認の通路を確かめに行きます。
そして、全ての通路の奥を把握した後にようやく番号2の目的地へと進みます。
一本道と比較してかなり歩数が伸びました。
この間に主人公は敵と遭遇して経験値を獲得します。
ゲームバランスを考えると無視できない状況です。

プレイヤーの道順には様々な経路が考えられますが、最初から「プレイヤーは常に最速で目的地に着いた後に引き返す」と仮定しておけば歩数の推測はほぼ可能になります。

地域ごとに獲得経験値を推測する

歩数の推測に目途がついたなら獲得経験値の推測まではすぐそこです。
その地域やダンジョンごとに敵との遭遇率と期待できる経験値を割り出し、歩数と掛け算するだけです。

昔はマップが狭かったので敵との遭遇率は25%ほどが良いのではないかと言われていました。
四歩進んで一回の遭遇率です。
もしこの数値を採用し、その地域での歩数が500歩だった場合は敵との戦闘回数は以下の計算になります。

500 × 0.25 = 125

125回の戦闘が行われると推測されました。
求めた戦闘回数に経験値の期待値を掛け算することで、その地域で得ることができる経験値の総量を推測できます。

経験値の期待値の出し方は数学で学習する宝くじの期待値の出し方と同じなので割愛します。
もし複雑な計算をしたくないのであれば、実際にその地域で敵と30回戦闘を行い、その戦闘で得た経験値の合計を30で割り算してください。
だいたい似た結果が出ます。

ちなみに、現代では25%の遭遇率は高すぎるので非難の対象になりかねません。
使用者の多いRPGツクールMZでの計算式は以下のようになっています。
マップに出現する敵を設定するより抜粋。

[次のエンカウントの歩数]= (0 ~( 敵出現歩数 - 1 ) の乱数 ) + ( 0 ~( 敵出現歩数 - 1 )の乱数) + 1

”敵出現歩数”はデフォルトでは30になっています。
分散されていますが約三十歩で一回の遭遇確率です。
昔の四歩で一回に比べてだいぶ減っています。

累積経験値を推測する意義

経験値の獲得総量を地域ごとに推測できれば、段階ごとの主人公のレベルを把握することにつながるため、難易度の調整が容易になります。
また、プレイヤーへの理不尽なレベル上げの強制も防ぐことができるようになります。

現代のRPGはサブクエストなどの寄り道要素が豊富なのでズレが生じるとは思いますが、目安程度に歩数と経験値を利用してみてはいかがでしょうか?

それでは今回はここまで。 つづく!