うるとらすーぱーえくすぷれす

技術を尽くして全力で遊ぶ

街の設計と道~古のRPGゲーム制作論第2回~

第1回はお楽しみいただけたでしょうか?
今回も前回に引き続き街についてのお話です。
一般人がパソコンやインターネット、携帯電話すら持っていなかった頃のアマチュアゲーム制作事情なんかも少し出てきます。
今となっては伝聞でしかないパラダイムシフトが起きる前の時代に思いをはせながら読むといいかもです。

古代文明の道事情

古代文明でのマップの基本は1画面

私はゲーム制作を語る際に、インターネットが普及する以前の時代を便宜的に古代と分類しています。
古代PC88文明とか古代X6800文明とかそんな感じです。
私は古代MSX文明の住民であります。

インターネットがなかった時代の創作は基本的に全て手探りでした。
製作のノウハウを手に入れる方法は書籍しかなく、その本に書かれた技術が製作者の全てでした。
技術系の書籍は初心者向けであるほど需要が高くなり売れます。
それが原因なのか、古代文明で売られていた本の内容はどれも似通っていました。

その結果、画面に存在する敵を自機から弾を発射して倒す『スペースインベーダー』や『UFOゲーム』の作り方が広く普及しました。

当時を知らない方には想像しづらいかもしれませんが、「一画面で完結するゲーム」を誰の手も借りずに独学で作り上げることがアマチュア同人としての第一歩だったのです。

画面のスクロールは高等技術だった

さて、現代のRPGのマップを語るうえで欠かせない最重要の技術に「画面のスクロール」があります。
この記事を読んでいる方はプロジェクターなどで大画面を使って記事全文を映写でもしていない限りは画面が上下に動くと思います。
この画面を上下に動かす技術がスクロールです。
現代の私たちは何気なく恩恵にあずかっていますが、この技術は古代文明において選ばれし者のみが扱う高等技術でした。

それはゲーム製作においても同様でした。
マップを作ろうとすれば1画面内に収めるのが普通でした。
だってスクロールの方法がわからないんですもの。
今のようにインターネットで調べることはできません。
多くの場合、スクロールをするために必要なメモリ等の知識が手元にある初心者用の本だけでは足りずに手詰まりしました。

広いマップは画面を切り替えて表現していた

では、RPGにつきものの広いマップをどのように作っていたのでしょうか?
答えは簡単です。
1画面で収まりきらないのなら複数の画面を繋げれば良いのです。
そのために古代文明ではRPGツクールでいう「場所移動イベント」を多用していました。
プレイヤーが画面の端に来たら「場所移動イベント」を発火し、他の画面を呼び出していました。
以下の画像をご覧ください。

複数画面の場所移動イベントイメージ
複数画面の場所移動イベントイメージ

左右それぞれの四角形が1画面です。
左四角形の画面端にプレイヤーが到達したとき、右四角形の画面端に場所移動イベントが起きるイメージを示しています。

画面の端に到達するごとに別の画面に場所移動させると容量が許す限り無限にマップを広げることができます。
欠点は場所同士のつながりがわかりにくいため迷いやすいということです。

古代文明の道は迷い人を導くために

複数マップ切り替え時の迷子を救済するために、古代文明人たちは画面に道を引きました。

道を敷いた画面
道を敷いた画面
上記イラストの黄色い線が道です。
どうでしょうか?
黄色い道の上を歩きたくなりませんか?
道があるだけで人の動きは簡単に制御できます。
人は道に誘われます。
この性質は現代のRPGのマップ作りにでも大いに役立ちます。

現代のRPGでも道は大事

町の入口は大通りに作ろう!

皆さんが遊んだことのあるRPGを思い出してください。
フィールドから街のマップに入ります。
あなたは街のどこに立っていますか?
おそらく街の中でも一番大きな通りか、それにつながる道ではないでしょうか。

大通りの入口のイメージ
大通りの入口のイメージ

実はこれ、プレイヤーの動きを制御するための仕掛けです。
大通りを入口にすることでプレイヤーの動きを直線的に制御しています。
例えば「大通りから宿屋へ」「大通りから武器屋へ」「大通りから脇道へ」といった具合に、街での行動を大通り基準で考えるように仕向けています。

こうしておくと大通りから離れるごとに治安を悪くしたり、イベントを設置したりということがやりやすくなります。
また、宿屋やイベントが起きそうな場所を教える案内人の数を最小限にすることができます。

最初にメインストリートを敷く

街を設計する際に最初にするべきはメインストリートを敷くことです。
そうするとプレイヤーの動きを予測でき、街の各施設の配置がしやすくなります。

また、メインストリートの作り方ひとつで街は様々な装置となります。

深い谷のある町
深い谷のある町

例えば上記のように、深い谷や遮蔽物によって上下に分断されている街があるとします。
街は左右に延びていますが橋は左にしかかかっていません。

この場合、プレイヤーは画像の「大通りから左、橋を渡って右」という矢印のルートを辿り、最も右奥の建物に向かいます。
そして、そこでイベントが起こることを期待します。

普通に考えると街の真ん中に橋をかけた方がリアルな気がしますが、そうすると右奥にプレイヤーが来てくれないかもしれません。
あえて上記の画像のようにメインストリートを設定することでプレイヤーに「イベントがある街」だと印象付けています。

古代文明の叡智によれば「人は見えている道の最奥に進みたがる」のです。
道の果てに建物や宝箱、人間が存在すれば必ず調べます。

RPGはゲームです。
製作者であるあなたは迷えるプレイヤーを導く使命を帯びています。
リアル志向の街で迷わせるよりもメインストリートを整備して目的地に誘導してあげましょう。

それでは今回はここまで。
つづく!