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技術を尽くして全力で遊ぶ

バランス概論(2)序盤のバランス調整~古のRPGゲーム制作論第7回~

昔のRPGは序盤が一番難しかった

現代と違って昔のRPGは序盤の難易度が一番高くなっていました。
序盤の高難易度の原因はゲームバランスだけでなく、ゲームシステムにも起因していました。
まだプレイヤーがどのようにRPGを遊んでいるのかという情報が不足していたため、プロもアマチュアも全力でゲームを作り込み、その結果が現れていたのだと思います。

一つの例をあげておきますと『ファイナルファンタジー4』よりも先にリアルタイムバトルをRPGに導入した『サイキックウォー』という作品では、出会って0秒で敵が攻撃を仕掛けてきました。
もちろん対処法はあるのですが、その方法に気づくまでが実質的な最序盤でした。
そこを乗り切れるようになるまでに比喩でなく何十回もゲームオーバーになります。
まだ家庭にほとんどパソコンが普及していない時代のパソコンゲームかつ、目新しい斬新なシステムだったのでプレイヤーの周囲には対処法を知る人は誰もいません。
プレイヤーは説明書の全てを頭に叩き込み、その内容を応用して事態を解決していきました。 (ゲーム中に必要なパスコードが説明書にしか記述されていなかったりしました)

昔のRPGでは序盤を乗り切るために、プレイヤーに以下の要素が必要でした。

  • 説明書の内容を正しく読み解く読解力
  • 説明書の内容を全て記憶する記憶力
  • 説明書の内容をゲームで用いる応用力
  • 説明書に書かれていない仕様をノーヒントで感じ取る直観力
  • 説明書に書かれていない仕様への対処をノーヒントで編み出す対応力
  • 何度倒れてもくじけない精神力
  • なんとしても序盤を乗り切るという意志力

これらが全て揃ってようやくスタート地点に立つことができました。
しかし、これは生半可な労力ではありません。 これでは新規のプレイヤーはなかなか寄り付いてくれません。
まだマイナーなRPG沼に新参者を沈めるには何が必要なのかをRPG愛好家が模索するのは自然の成り行きでした。

序盤を乗り切ってもらうための施策

プレイヤーに序盤を乗り切ってもらうにはいくつかの鉄板法則があることを古代文明人は発見しました。
今ではアマチュアの同人ゲームでも行われているような当たり前の調整ですが、昔はそうではありませんでした。

序盤の敵の殺意は控えめにする

序盤の通常敵に殺意の高い攻撃をさせないようにすることは大事です。
序盤に出会った敵にコテンパンに何度も打ちのめされ続けると、クリアできないゲームだとみなされて放棄されることが多くあるようです。
全ての人類が理不尽に立ち向かう不屈のゲーマー魂を持っているわけではありません。

出会った瞬間にノータイムで全力攻撃をしてきたり、敵の会心攻撃で主人公を一撃でゲームオーバーに追いやったり、状態異常で主人公にターンが永久に回ってこないようにしたりetc...等の初見殺しを序盤の通常敵で行うのはやめましょう。
どうしても取り入れるならせめてボスでするか、対応策かヒントを確実にプレイヤーに伝えるようにするべきです。
まだ操作方法すら覚えていないプレイヤーに色々と試させるのは酷です。
せめて説明書の内容を咀嚼させるだけの猶予を与えましょう。

回復手段を伝えておく

序盤の主人公は弱いです。
放っておくとすぐに体力を失って雑魚敵に倒されてしまいます。
それを防ぐためには体力を回復すれば良いのですが、RPGは回復方法が千差万別です。
宿屋に泊まる等のお約束の方法を採用していた場合、開発者は説明しなくても大丈夫だと思っているでしょうが、実際は違います。 プレイヤーが無知であっても、反対にゲームの経験が豊富であっても、ゲーム内でアナウンスされるまでは体力の回復方法を知りません。

例えば、最初の街では主人公の実家で体力を全回復できるのに、わざわざ宿屋でお金を払って宿泊したことはありませんか?
プレイヤーに回復方法が伝達されていないからこのようなことになっています。
全てのゲームでは多かれ少なかれ同じことが毎回起きています。

回復アイテムについてもそうです。
急に薬草を渡されても、これが回復アイテムなのか、それとも何かのイベントアイテムなのか、説明がなければ何もわかりません。

プレイヤーには必ず回復場所や回復アイテムの存在を伝え、場所に案内するなりアイテムを渡すなりして実際に使ってもらいましょう。
これだけで序盤での離脱をぐっと防げます。

独自システムの説明は勝利と共に

人気シリーズでもない限り、独自システムの説明は勝利と共にあるべきです。
どういう意味かというと、独自システムにはまず間違いなく説明書かゲーム内で説明がなされます。
その内容を実践する最初の戦闘ではプレイヤーに勝利を与えるべきだということです。
「説明通りに操作を行ったら敵に勝てた」という実績をプレイヤーに刻み込み、使って面白いシステムだと印象付けるのです。
その後のプレイヤーは自分で試行錯誤を行なってくれるようになり、クリアまでプレイしてくれるでしょう。

序盤のパワーアップは迅速に

RPGにおいて味方キャラが極端に弱い状態は好ましくないとされています。
なぜなら味方キャラが弱いと敵も弱くせざるを得ず、戦闘がワンパターンになってしまうからです。
それが序盤ならまだいいのですが、ずっとワンパターンな戦闘が続いてしまうと飽きられてしまいます。
回復手段や独自システムなど、冒険の旅に必要なことをプレイヤーに伝え終えたのなら、まともに戦闘を行なえる段階まで迅速にパワーアップさせましょう。
もしもパワーアップにレベルが必要なら前回の『バランス概論(1)歩数と経験値~古のRPGゲーム制作論第6回~』が多少役に立つかもしれません。

序盤の調整が一番難しい

RPGの序盤の調整に関しては鬼門に例えられることもあり、昔からその難しさが伝えられています。

現代は気軽に他の人のゲームを手に取り研究することができます。
そのおかげなのか序盤で挫折するゲームは少なくなったように思います。
中にはセンスで補っている作品もありますが、ほとんどに試行錯誤の跡が見て取れます。
プレイして快適だと感じた作品をどんどん研究しましょう。
多くの工夫が序盤に凝らされているはずです。

それでは今回はここまで。つづく!