うるとらすーぱーえくすぷれす

技術を尽くして全力で遊ぶ

快適なRPGとコマンド入力の関係~古のRPGゲーム制作論第11回~

前回は宝箱について語りました。
今回は操作などについてです。
本記事で出ている1990年代初頭に予測されていた理想のRPGの姿と、現代のRPGの姿を比べると面白いかと思います。

快適なRPGとは何か

この『古のRPGゲーム制作論』シリーズは1992年から1993年までの雑誌の資料やそのメモ書きを元に記述をしています。
その資料の中で一貫していることは、いかにプレイヤーに快適なRPGを届けるかということです。
では、快適なRPGとは一体何なのでしょうか?

その正体は「コマンド入力が少ないRPG」のことだと明確に結論が出されています。

例えばプレイヤーが村人と会話する場合、昔のゲームでは

  1. 主人公が村人の方向を向く
  2. コマンド入力画面を表示する
  3. 「はなす」というコマンドを入力する

の三段階が最低でも必要でした。
現代ではコマンド入力画面の表示がなくなって村人の方向を向いてボタンを押すだけで会話をすることができます。
ちょっとしたことですが快適性が全く違うことがお分かりになるかと思います。

昨今のゲーム開発ではあらかじめコマンドが整備されたツールが多用されています。
『WOLF RPGエディター』(公式サイト)や『RPGツクール』(DLsite販売サイト)などです。

かつてコマンドの整備は専門知識が必要な多大な労力を伴うものでした。
それが今や何も考えなくても誰でも快適なRPGを作ることができます。
技術の進歩と人類の英知にただ感服するばかりです。

快適な戦闘とは

開発ツールによってフィールドのコマンド入力の快適性は担保されているものの、油断は禁物です。
いくら最新のツールでも戦闘のコマンドまでは最適化されていないからです。

戦闘におけるコマンド入力の省力化の理想形とは、つまるところ自動戦闘です。
さすがにプレイヤーの分身である主人公は操作するものの、それ以外の仲間は自律して行動することが最終的には求められます。
仲間はプレイヤーの足を引っ張ってはいけません。
自律した仲間が弱らせた敵にプレイヤーの操作キャラがとどめを刺す形が理想です。

チマチマしたコマンド入力に慣れ親しんだプレイヤーには何が面白いのかわからないかもしれませんが、この流れは長年プレイヤーが望んできた結果であり、RPGはその要望に応えて何十年もかけて戦闘コマンドの省力化を模索してきました。

あなたが企画したRPGの技の数はどのくらいありますか?
戦闘中にすぐに利用できる場所にコマンドが配置されていますか?
もし一目で把握できないのであれば、そのキャラクターは技を持ちすぎています。
整頓してプレイヤーの指の負担を軽減しましょう。
仲間の自律とまではいきませんが、仲間を賢く操作するようにプレイヤーを誘導することはできます。

快適なRPGを作るためにできること

難所にぶつかった時にすぐにリトライできることも快適なRPGに必須だとされています。
たとえばダンジョンの中のセーブポイントです。
セーブポイントはどこに置かれているでしょうか?
仕掛けやボス部屋の手前に置かれているのではないでしょうか?

この配置は万全に体制を整えて障害に対応してほしいという製作者の意図と、失敗してダンジョンの初めから挑戦する時間を節約したいというプレイヤーの要望が組み合わさって産まれました。

また、街に戻って何度も道具を買わなくてもいいように、道具袋に入るアイテムの個数を事実上の無制限にしました。
他には一瞬で魔物を呼ぶことができるようにしたり、一瞬で別の拠点にワープできるようにしたり、クリアしたダンジョンから自動で脱出したり、道なりに進めば目的地に到着するようにフィールドマップを工夫したり、等のあらゆる工夫を行いました。

これらは全てコマンドを省略する方向で実装がなされています。
もしあなたがコマンドを省略できる部分を見つけたのなら迷わず導入してください。
ほぼ間違いなくプレイヤーは歓迎します。
もしかすると、それが今後のRPGのスタンダードになるかもしれません。

いつの時代もプレイヤーはわがまま

反対に、プレイヤーのコマンド入力を多くさせるとどうなるでしょうか?
その答えは『ライトファンタジー』が教えてくれます。

スーパーファミコンのクソゲーランキングでは必ずと言っていいほど見かけるのでご存じの方も多いかと思います。
クソゲーと言われていますが、私はこのゲームが好きです。
シナリオもいいし、音楽やグラフィック、戦闘システムも力が入っています。

ではなぜ後世でクソゲー扱いされているかというと、戦闘システムに力が入りすぎだからです。
このゲームの会敵はランダム遭遇です。数歩進むと敵が出ます。
さらに、戦闘方式はSLG方式です。

はい、勘のいい方はもうお分かりかと思いますが、SLG方式なので戦闘にやたらと時間がかかります。
コマンド入力回数も一般のRPGとは比較にならないほど多いです。

全てが素晴らしい出来のゲームなのですが、戦闘システムの煩雑さの一点を以てしてクソゲーと言われ続けているのです。
プレイヤーは余計なコマンド入力を嫌います。
その嫌悪は製作者が思うよりも何十倍も強いです。

このゲームはクソゲーという評価が定着してしまっているので、信じられないかもしれません。
念のためにもう一作品の例をあげます。
その作品は『バズー!魔法世界』です。

この作品もスーパーファミコンソフトです。
時々クソゲーランキングにランクインすることがありますが、ライトファンタジー程の頻度ではありません。
それにこのソフトはシナリオもいいし、音楽やグラフィック、戦闘システムも力が入っています。

おや? なんだかライトファンタジーと同じ匂いがしますね。
もうお気づきでしょう。
この作品も戦闘で多くのコマンド入力を余儀なくされるせいでクソゲー扱いされています。

この作品も戦闘に入る度にいちいち敵に近づかなくてはなりません。
その煩雑さが仇となってクソゲーと呼ばれています。
しかし戦闘システム以外の他の内容はというと、スーパーファミコンでも屈指の完成度を誇っています。
もし私がスーパーファミコンの隠れた名作ランキングを付けるとするなら、絶対に上位にします。
それくらい面白い作品です。

いくら優れたゲームを作っても、あきらかにコマンドの入力回数が多いとほとんどのプレイヤーはすぐにクソゲー認定をしてきます。
そこに慈悲はありません。
一度クソゲー認定されればずっとネット上にその評価が残ります。

プレイヤーはわがままです。
さらには一度意地悪をしたら誇張を重ねて吹聴し、執念深く話題の種にします。
1992年当時から製作者はプレイヤーに意地悪と思われないように様々な工夫をしながら新しい要素を組み入れてきました。

もしコマンド入力を多くするのなら、このことを肝に銘じてシステムを組みましょう。

終わりに

古い資料を元にしたシリーズをここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。
『古のRPGゲーム制作論』は今回で最終回です。

古い知識を再構成して記述しただけなのですが現代のゲームでも通じる点が多いことに驚いています。

当時は名前が付いていなかった用語や概念、現代では聞いたこともない考え方等が出てきて言葉選びが大変でした。
時代の流れを感じつつ、楽しんでいただけたのなら幸いです。

それではこの辺りでお暇致します。
おそまつさまでした。