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Twitterにおいてフォロワー数600名はどのような意味を持つのか? スペース機能解禁の裏を読む

Twitterスペースの解禁条件

2021年5月にTwitterが『スペース』と呼ぶ新機能を一部のユーザーに開放しました。
解放したユーザーの条件は「フォロワーが600名以上であること」です。

ところで600という数字に違和感を持った方も多いのではないでしょうか?
なぜ500や1000といったキリの良い数ではなく600なのでしょうか?

その理由を探ってみます。

なお、筆者はTwitter公式とは何の関係もありません。
もしかすると見当違いかもしれませんのであしからず。

5万アカウントのデータを収集

今回の記事を書くにあたってTwitterAPIの無料枠を使って5万アカウント分のフォロワー数の情報を収集しました。
8週間以上にわたっての断続的な収集なので正確なデータとは言いづらいですが、誤差の範囲と割り切っています。

期間の割にデータ数が少ないのはTwitterAPIを他のことにも使っているのでリソースを割けなかったからです。

Twitterスペース機能の雑感

ある対象について話をする際には、それがどのような物なのかを知っておかなければなりません。
フォロワー数の話の前にTwitterスペース機能の特徴をおさらいします 。

スペース機能のおさらい

Twitterスペースは文字ベースのSNSであるTwitter上で音声をリアルタイムでやり取りできる機能です。
「話す人」と「聞く人」に分かれており、「話す人」は11人まで同時に参加できます。
この11人は最初の一人以外はフォロワー600名未満でもなることができます。
「話す人」は最初の一人が招待します。

一方、「聞く人」にはフォロワー数に関係なく誰もがなることができます。
「聞く人」は文字を打つことはできません。
その代わり、あらかじめ用意されたスタンプを送ることによって話す人にリアクションを取ることができます。

また、スペース機能で「話す人」をしている間は、他のアカウントが開催しているスペースを聞くことができません。

Twitterスペースの会話内容は全て公開されています。
Twitterの利用者は誰もが全てのスペースを聞くことができます。

使用感はラジオに近い

「聞く人」として実際にTwitterスペースを利用した感覚ですが使用感はラジオに近いです。
こちらからの干渉がほとんどできない相手の音声を耳で聞くだけなので、当然と言えば当然です。

「話す人」の内容は完全に本人に委ねられています。
Youtubeやニコニコ生放送とは違って、途中で視聴者からの質問などが入らないので個人配信だと間が持たずにすぐ終わります。
最近は「話す人」が複数人集まって、一つの物事について歓談する企画をよく見受けます。

スペース機能はどのようなアカウントが使うのか?

Twitterスペースの特徴を踏まえて機能の立ち位置を考えます

スペース機能の原動力

スペースで話した内容は外部に完全公開されます。
ということは、仲間同士が集まっての内輪だけでの内緒話ができません。
スペース機能を利用して話をする際は、「聞く人」の存在を常に意識づけられます。

対して「聞く人」は、「話す人」が定めた時間にそのアカウントを開き、スペースを聞きます。
これはラジオで聞きたい番組の時間になったら周波数を合わせるのと同じ段取りです。
「聞く人」がスペース機能を利用するには、”聞きたい番組”に相当するスペース機能を利用するための要因が必要となります。

結局のところスペース機能に人を集めるのは「話す人」の役割です。
さらに、「話す人」がいなければスペース機能は稼働すらしません。
完全に「話す人」頼みの仕組みです。

「話す人」の集客性に期待している

Twitterスペースの成功に必要不可欠なのは「聞く人」の集客性です。
それも、ただ人を集めるだけでは足りません。
次に挙げる要素を兼ね備え必要があります。

  1. 自分で人を集めることができる
  2. 聴衆が耳を傾けるコンテンツを自ら企画できる
  3. 自らのツィートにある程度の拡散力がある
  4. スペース機能を「話す人」として使用してくれる

冷静に考えるとスペース機能は、文章を気軽に投稿する形のTwitter本来の機能よりも他人に情報を届ける手順が多くなっています。
単純に「話す人」になるだけなら容易なのですがハードルが高いです。
戦略的に動かないと、視聴率が0%のラジオ、お客がいない落語寄席になってしまいます。

フォロワー数からスペース機能を読み解く

では、そんなハードルが高い機能をなぜフォロワー数が600名以上のアカウントに開放したのでしょうか?
なぜ1000フォロワー以上ではないのでしょうか? フォロワー数のデータから見てみます。

企画力が高いアカウントを見つけたいのではないか?

SNS上で影響力があるアカウントは「インフルエンサー」と呼ばれています。
単純に考えるとスペース機能を広めるためには「インフルエンサー」に使ってもらうことが最良の選択肢です。

先に述べたように、スペース機能で「話す人」をしている間は、他のアカウントが開催しているスペースを聞くことができません。
このことから、Twitter社がスペース機能の「聞く人」よりも「話す人」を重点的に開拓しようとしていることは明らかです。
普段は有名人のラジオを聞いている聴衆に、自ら情報を発信してもらおうという意図が見えます。
ラジオのお葉書コーナーをそのまま番組として独立させるような感じです。
これまでただラジオを聞くだけだった集団が新しい番組を持つことで、多少なりとも有名人の番組を脅かす存在になります。

そうすると将来的に何が起きるか?
集団の中から頭角を現す人物が出てきて、新しい「インフルエンサー」が産まれます。
映像になりますが、Youtubeで活躍しながらテレビにも出演するYoutuberのような存在がTwitterからも出てくるはずです。

Twitterスペースは知名度が高いだけでは長続きしません。
ラジオと同じです。
スペースで流す内容の企画力が高くないと「聞く人」は離れていってしまいます。

スペースをうまく活用して頭角を現した新しい「インフルエンサー」は本物の拡散力を有しているはずです。
そこにはフォロワー数の多寡に惑わされない本物のエンターテイメントがあります。
絶対に企業は放っておかないでしょう。

なぜフォロワー数600以上のアカウントに白羽の矢が立ったのか?

なぜTwitter社はフォロワー数600をスペース機能解禁の条件にしたのでしょうか?
データを元に見ていきます。

もしもフォロワー数1000以上での解禁だったら

今回私が集めた5万件のデータでは、フォロワー数1000以上のアカウントというのは全体の上位20%にも満たない数しかいません。

スペース機能を解禁したとして、そのうちの何割が「話す人」になってくれるでしょうか?
Twitter社がその数を3割程度と見積もったとします(おそらくこれに近い数値で計画を立てているのではないかなと私は思っています) 。
それぞれの人数を計算してみましょう。

1000フォロワー以上のアカウント数
50000 × 20% = 10000

「話す人」になってくれる数
10000 × 30% = 3000

「話す人」になってくれる割合
3000 ÷ 50000 = 6%

フォロワー数1000での解禁だと僅か6%しかいません。
新機能を広めるには数値が低すぎます。

フォロワー数600以上のアカウントの場合

では、これがフォロワー数600以上のアカウントへの解禁となるとどのように変化するでしょうか?
フォロワー数600以上のアカウントは全体の上位30%を占めます。
フォロワー数1000と比較して10%も増えています。
では、同じようにそのうち3割程度が「話す人」になってくれると仮定して、それぞれの人数を計算してみましょう。

600フォロワー以上のアカウント数
50000 × 30% = 15000

「話す人」になってくれる数
15000 × 30% = 4500

「話す人」になってくれる割合
4500 ÷ 50000 = 9%

1000フォロワー時の6%と比較して600フォロワーでは9%にまで上昇しました。
フォロワー数1000と600とでは3%も違いがあります。
不謹慎な例えになりますが、コロナ禍の感染爆発段階移行への陽性率の基準は10%です。

Twitterにとってフォロワー数600という数値はインフルエンサーへの登竜門と位置付けられている可能性があります。

終わりに

今回はTwitterスペースの解禁条件からちょっとだけ考察してみました。
短くまとめてみましたがいかがだったでしょうか?

それでは今回はこの辺りでお暇致します。
おそまつさまでした。