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戦闘ダメージ概論(1)~古のRPGゲーム制作論第3回~

ダメージとは何か?

前回までは駆け足ながらも街のマップについて記してきました。
今回からは趣向を変えて戦闘を扱います。

まずはダメージという概念について考えていきます。

戦闘の要素を切り抜く

ダメージの性質

RPGの戦闘における"ダメージ"とはいったい何のことなのでしょう?

RPGでは敵を攻撃した際に「敵に999ポイントのダメージを与えた!」という使われ方をよくします。
そして、何度かダメージを与えると「敵は倒れた!」となり「戦いに勝利!」します。

このことからわかるダメージの性質は次の6点です。

  • 敵や味方の対象がある

  • 数字で表すことができる

  • 与えたり受けたりすることができる

  • ダメージは複数回発生する

  • ダメージは蓄積される

  • ダメージを与えると対象が倒れる

ゲーマーは普段から何気なく使っていますがRPGを語る時に使われる”ダメージ”という単語には様々な意味が加わっていることに気づいたかと思います。
ゲームをしない人には通じにくい単語なのです。

なぜなら一般で使われる”ダメージ”は蓄積するものではなく一時的に傷つけるものだからです。
蓄積する意味での"ダメージ"は工業や化学などの専門分野で使われます。
RPGで使われる"ダメージ"はゲーム愛好者独特の専門用語と思った方がよいです。

「ダメージとは一体何なのか?」という認識をしっかり持つことは、戦闘を設計する際にとても重要です。
特に、ダメージが蓄積するかどうかは戦闘システムの根幹にも関わってきます。

蓄積するダメージと一時的なダメージ

少しややこしくなりますが、ほとんどのRPGには先ほど述べた「蓄積するダメージ」と一般で使われる「一時的なダメージ」の二つが混在しています。

「敵にダメージを与えて倒す」という例は、蓄積するダメージによって生じます。
ただ、これだと何を言っているのか一般人には不明です。
もう少し詳しく書いててみましょう。

「敵の体力にダメージを与えて倒す」

これならギリギリ伝わりそうです。
体力が減ると疲れてへとへとになります。
疲れは積み重なるものです。
ダメージが蓄積するものだと理解してもらえるでしょう。

また、ゲーマーが普段使うダメージもこの意味です。

これにて一件落着!としたいところですが、前項で上げたようにダメージは「数値で表すことができる」という性質を持っています。
RPGで敵や味方が数値で持っているものは体力だけではありませんよね?
そう、"攻撃力"や"防御力"、"素早さ"も所有しています。
戦闘のルール次第ではこれらにもダメージを与えることができます。

ただし、体力以外の数値はダメージの計算に関わっていることが多いので一時的なダメージに過ぎないことが普通です。

蓄積の果てに勝敗が決まるのだとすれば相手が与えてくるダメージを無くしてしまえば必勝となります。
また、ダメージの与え合いができなくなるのでゲームとして成立しなくなります。

体力以外にダメージを与える行為は、俗に”能力低下(デバフ)”と呼ばれます。

ダメージとは概念である

さて。RPGの戦闘の勝敗はダメージの蓄積によって決まります。
ダメージの蓄積が体力を上回った場合に勝敗が付きます。

わかりにくいかもしれませんが、
ダメージと体力以外は戦闘結果に影響がない
とも言いかえることができます。

つまり、ダメージを考えるにあたっては『防御力』も『素早さ』も考える必要はありません。
ダメージとは体力が増減するだけの概念です。

私たちは足し算や引き算をするために数字を使います。
昔は計算をするために魂や精神の存在が必要だと言われていましたが、今は機械だって計算をしています。
計算をするために数字以外は必要としません。

ダメージも同じように単純化して捉えると理解が深まります。

火力の単純化

ダメージの単純化

具体的なダメージの計算式はゲームが進化するごとにどんどん複雑になっています。
しかし、それは攻撃を受ける側の『防御力』を考慮する場合に限られます。
『防御力』を考えなければ昔も今も戦闘の勝敗とダメージの関係に変化はありません。
すなわち、勝敗を決めるのは

体力-蓄積ダメージ ≦ 0

という関係です。
この関係をさらに単純にすると

体力 ≦ 蓄積ダメージ

という関係が成り立ちます。

このように単純化すると「体力が蓄積ダメージ以下になったら勝敗が付く」と一言で表すことができます。

簡単ですがRPGの普遍的な真理です。

物理の火力は一次項

RPGには戦士や魔法使いにそれぞれ攻撃力が設定されています。
この場合の攻撃力には武器を装備した上乗せ分も入ります。
攻撃側の攻撃力を元に火力が決定され、防御側の防御力や属性などを計算した結果がダメージとなります。

RPGの攻撃は大きく分けて物理攻撃と魔法攻撃があります。
この二つは伝統的に異なる計算式で火力が決定されることが多いです。

攻撃を行うのは主に戦士です。
戦士の攻撃力は一般的にレベルが上がると上昇していきます。
つまり、どんどん変化していきます。
これをふまえると味方が1ターンで1体の敵に与える物理ダメージは次の式で単純化できます。

物理ダメージ = 戦士の人数 × 味方戦士の攻撃力の平均値

戦士の人数だけではなく、いかに高い攻撃力を持った戦士を得るかが物理ダメージを高める要因であるとわかります。

魔法の火力は定数

物理攻撃に比べて魔法攻撃は単純です。
魔法攻撃はダメージ幅が定められている場合が多いのでレベルアップの影響をあまり受けません。
魔法の攻撃力が30ならば、30のダメージをどのレベルでも敵に与えます。
この30のダメージを与える魔法を魔法使いが必ず覚えている初期魔法だとします。
この場合、味方が1ターンで1体の敵に与える魔法ダメージは以下のように表せます。

魔法ダメージ = 魔法使いの人数 × 30

魔法ダメージは魔法使いの人数以外に変動要因はありません。
もちろん強力な魔法を覚えれば30の部分は変化しますが、魔法ダメージが人数に比例することは変わりません。

戦闘ダメージ概論(2)に続く

ダメージを単純化することで戦闘の流れがわかりやすくなったのではないでしょうか?
簡略化されすぎて物足りなくなった人もいるかもしれません。

まずは簡単な仕組みから考えて、複雑化するのは後にしましょう。

長くなってきたのでいったん区切ります。

次回の戦闘ダメージ概論(2)ではランダムエネミー、いわゆる雑魚敵の固さとダメージについて記します。

つづく!