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バランス概論(3)中盤のバランス調整~古のRPGゲーム制作論第8回~

前回は序盤について記載しました。
今回は中盤についてです。

中盤は中だるみの時期

ゲームの中盤はレベルアップによる能力上昇の効果が相対的に小さくなり、戦闘に慣れが生じてくる頃です。
目新しい戦闘システムが目玉のゲームでも中だるみの前には膝を屈するしかありません。

ジャンルは変わりますが、演劇などの興行においても中盤の中だるみは大きな課題として対応策が練られてきました。
例えばスポーツ観戦をした際に、節目ごとに花火が上がったり歌や踊りが流れたりしたことはありませんか?
あれらは以前の流れを断ち切って別の刺激を与えることで中だるみを防いでいるのです。
中盤のバランス調整は刺激の調整と切っても切り外せません。

RPGの中だるみ対策の例

古今東西問わず、過去の哲学者や演出家達は中だるみの正体を『凪』や『平原』に例えました。
穏やかな海よりも荒れ狂う波を、爽やかな風よりも激しい砂塵を人々は他人に求めます。
ゲームはおしなべて他人の話です。
ここは先人にならって、どんどん騒乱に巻き込みましょう。

ボスを多めに配置する

RPGで主人公を騒乱に巻き込むにはボスを配置するのが一番です。
マンネリ化した通常の敵との戦闘の間に強敵を挟むことによって、作業プレイを仕切り直します。

行動範囲を広げる

船などを解禁して新マップにプレイヤーを誘導するのも良く取られる手段です。
新マップに行けばまだ見ぬ敵とも戦えます。
ただし、新マップの登場だけでは中だるみ対策としては弱いことが昔から経験則として知られていました。
刺激が弱いからです。
中だるみ対策として活用するには同時にプレイヤーの目を覚まさせる手段が必要です。

報酬を用意する

中だるみ対策としてボスの配置と共に最も効果的なのが、報酬を用意することです。
世界中を回って非売品の強力な武器や防具、技や魔法を手に入れると喜びを感じませんか?
見知らぬ土地に行けば素晴らしい報酬が手に入ると気づいたら、どんどん先に進みたくなりませんか?
人間は目先の餌に飛びつく生き物です。
理性なんて小綺麗なことを言っていますが、しょせんは動物なのです。
絶え間なく報酬を与え続けていれば中だるみは発生しません。
やり込みゲーの類は人間のこの性質を利用してプレイヤーに作業を強い続けています。

音楽を変更する

ゲームの途中から戦闘音楽やフィールドの音楽を新しいものに変更するのも中だるみ対策に有効です。
この方法は数百年前から古今東西の思想家達が、演劇や舞踏などにおいて言及してきました。

新しい要素を解禁する

魔物を仲間にしたり、新しい攻撃方法を編み出したり等の新しい要素を解禁する方法は刺激が強いので効果抜群です。
昔の小規模なアマチュアRPGでは、5の倍数のターンにしか使えない超強力な技や、戦闘時以外に何度も全回復できるアイテムなど、ゲームバランスを一変する要素が解禁されていました。
ただしこれはプレイヤーへの救済措置でもありました。
昔のアマチュアゲームはゲーム自体が短いので、中盤の経過が早く、すぐに終盤の強力な敵と対峙することになります。
強力な技や回復方法がなければとても太刀打ちできなかったのです。
今になって思えば、その大味なバランス調整が脳の報酬系を強く刺激していました。

中盤のバランス調整は人為的に行う

最初に述べたように中盤はレベルアップによる能力上昇の効果が相対的に小さくなります。
このような状態ではレベルアップだけでは成長を感じにくくなり、中だるみします。
その対策の一つとして、中盤のバランス調整は新しい武器や防具の数値を高めにして少しインフレした通常敵と戦わせる方法があります。
その結果「こんなに強い敵を倒せた」「以前の敵を弱く感じる」の両方を体験させ、新しい成長ステージにプレイヤーが足を踏み入れたと錯覚させるのです。
実際は武器防具の力なのでプレイヤーが成長したわけではありません。
ゲーム製作者の手の平で踊っているにすぎず、主導権はこちらにあります。
この状態のプレイヤーは面白いほどにこちらの思うとおりに動いてくれます。
慢心しているところに絶望を突き付けるなり、報酬を用意して中毒に陥れるなり存分にもてあそびましょう。

それでは今回は短いですがこれまで。つづく!